すまろ第六号より抜粋


青木ヶ原樹海探訪記(後編)

 

 こんにちは、風瑞希です。たった一晩、いえ数時間の間の出来事なのに、もういろいろありすぎて・・・僕はどうなるんでしょうか。朱雀門さんは助けてくれるのでしょうか。そして、悪魔のような威斗萎芙李さんは、そして明さんは・・・いよいよクライマックス本番待った無しという感じです。僕は生きて日の目がみれるんでしょうか。(やっぱり、こわいよぉ。いやだぁ。)

 さて、後半です。

(略)

 それってちっとも大丈夫じゃないし、第一あんたはなんでそんな場所に人を案内できるほど樹海を知っているんだいっ!と大声でツッコミを入れそうになりましたが、憶病な僕には「はははははっ」と笑っているのが精いっぱいです。(嫌だ、嫌すぎる。僕は一体どうなってしまうんだろう。)

 そうこうしているうちに風穴洞の駐車場に着いてしまいました。遠くでまだ音楽は聞こえていましたが、不思議と回りには人影もなく(あったらあったで恐いかもしれませんが)駐車場に他の車は一台もありませんでした。

 車が止まると、それぞれに身仕度を始めました。身仕度といっても、僕はハンドライトを出すぐらいです。同行の皆さんを見ると、明さんはごっついカメラに大きなフラッシュをつけています。朱雀門さんはウエスト・バッグの中を点検してます。手には何か数枚の色紙が・・・怪しすぎる。威斗萎芙李さんは、大きなマグライトを取り出しています。

 「あっ、それはアメリカの警官が使ってる奴と同じのですね。」

 といったら、

 「そう。いざとなったらね・・・」

 とニヤリとしました。(いっいざってなんだ?)

 各自点検が終わっていよいよ樹海の奥に続いている風穴胴入り口の砂利道に集合しました。実はここだけ自販機があったりして明るいのですが、僕らが進む方向は真っ暗です。風穴洞本日終了の立て看板があり、道いっぱいに太い鎖で封鎖してあります。

 「さあ、この奥が樹海だよ。」

 明さんが言います。

 でも、遠くで聞こえている音楽や人の喧騒と、なぜか異常に明るくはしゃいでる明さんのおかげで、ドキドキはしていますがあまり恐くありません。(よかった。)

 「じゃあ、出発っ・・・」(ドキドキ、いよいよだぁ。)

 「っと、その前にここで全員の記念写真だね。」(あらっ)

 明さんのお約束のような肩すかしに、和やかなムードで僕たちは鎖を跨いで樹海に入っていきました。(この時点では、ちよっとだけワクワクした気分だったんです。)

 十メートルも進むと、すごく嫌な事に気がつきました。今まで星明かりなどあった空も見えなくなり、ライトが当たっている以外の場所はなにも見えない真っ暗闇なんです。しかも、なんかザワザワしているんです。僕ら以外に誰もいるはずがないのに、なんか少し離れたそこらかしこから誰かが僕らを見ているような気がします。(こっ恐い。あっ、やっヤバイです書いてる今でも鳥肌が立ってきます。)遠くで、人の喧騒が聞こえてくるだけに、僕たちの周りの異様な雰囲気が良くわかります。(後悔先にたたずとはこの事かぁ。)

 僕のビビッた気配がわかったのか、突然明さんが、

 「樹海で自殺した霊魂って言うのはね、一人になりたくてこの場所で社会と決別する最後の決心をしていったんだろうね。だから、彼らの想いが強く残った為にこの辺りが一番気配がするんじゃないかな?でも、みんな孤独になりたい連中だからちょっかいをかけては来ないよ。ほら、遠巻きにこちらを見てるだけで、近寄ってこないだろ?」

 僕は背筋がゾッとしました。だって、さっきから誰かに見られている様な気がして仕方なかったからです。(マジ、恐いッす!)

 「ふむ。そうですね。」

 威斗萎芙李さんがさらりとフォローをいれてます。

 「まあ、この先に行けばだんだん気配もしなくなるから平気だよ。この道はね、(略)〜自殺志願者の人達はその遊歩道から各自適当に道からそれて奥に入って行くらしいんだよね。あっ、でも知ってる?実際の自殺現場ってさぁ。人が良く歩く道から500メートルぐらいしか離れてないんだって。彼らの微妙な精神状態が距離になってるよね。」

 明さんが僕を安心させようとしてるのか、恐がらせてるのか解らない様な説明をしてくれました。

 いつのまにか普通の砂利道から、岩がゴロゴロした歩きにくい道に変って行きます。僕たちは明さんを先頭に、そのすぐ後ろを朱雀門さん、そして僕、最後を威斗萎芙李さんが歩いて行きました。僕はさすがに一番後ろは恐かったのですが、威斗萎芙李さんが自然に後ろに回ってくれたのは意外でした。威斗萎芙李さんのマグライトが僕の足元を明るく照らしてくれるので安心できました。本当は善い人だったのかもしれません。ちょっと感謝しました。

(略)

 僕のレポートはここまでです。本当につたない文章でしたが、少しは僕の気持ちや恐さを解って頂けたでしょうか。何かの機会に皆さんの感想が聞ければ嬉しいです。

 次回は八王子城址と言う事になりますが、僕は絶対に行きません。絶対に行きませんからね。お願いしますよ。明さん。本当にお願いします。絶対に行きませんから。



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